「西成のまちづくり100話」
サンフランシスコへ福祉視察
西成地区街づくり委員会は、1996年7月6日から11日まで、サンフランシスコ在住のリチャード・スカッフさんを招き、講演会やまちのウォッチングなどを取り組みました。 スカッフさんは、当時52歳で、1978年に事故で大けがをし、車いすで生活するようになりました。障害者への差別や暮らしにくい環境を痛感し、81年には町会議員にもなり、87年にサンフランシスコ市にまちづくりの提言を行い、89年には同市の職員になり、アクセス諮問委員会のコーディネーターを務めておられました。いまでこそ、日本にも乙武洋匡さんのような障害者が活躍していますが、当時はまだまで、スカッフさんの行動や言動は、とても新鮮で、まちづくりの刺激になりました。 そして、1996年10月21日から30日の10日間、街づくり委員会の福祉視察団が、サンフランシスコ市、バークレー市、サクラメント市を視察しました。スカッフさんが案内してくれました。そこで、初めて、バリアフリーを超えた「ユニバーサルデザイン」というまちづくり理論を知りました。公園の遊具などには、「障害の有無を問わず、すべてのこども達がチャレンジできる」という着想でのデザインに驚きました。1985年頃に、ロナルド・メイスという障害者が提唱した「すべての人々(障害者だけでなく)に優しいデザイン」というユニバーサルデザインは、1990年の全米障害者法(ADA)制定もあって、急速に普及されましたが、「西成」が訪れたアメリカは、まだ、その冷めやらぬ頃でした。 また、企業でも行政でもない非営利団体が建設した集合住宅を訪問しましたが、老朽化したり、低所得者しか入れない公営住宅に比べ、コンセントの位置や、バスルームの手摺り、キッチン、ガスレンジなど様々な工夫がなされ、かつ適正な家賃の住宅を見て、ユニバーサルデザインの面白さに共感しました。まだNPO法すら知らない時(1999年制定)でしたから、公とも、民とも違う事業主体に驚きました。 さらに、自治体の「アクセス諮問委員会」の様子も見学し、障害当事者が、さまざまな施設や建物、道路などの企画や点検や参画していることを知りました。また、障害者の自立生活運動の拠点CILを訪問し、全米障害者法を実現したアメリカの障害当事者運動を間近に学びました。このCIL運動を提唱したエド・ロバーツという障害者の母校(大学)がUCバークレーで、そこも訪問し、自由のメッカと言われた大学のキャンパスで、障害者運動を学びました。