「西成のまちづくり100話」
今宮駅前北開・中開地区まちづくり構想
“北津守まちづくり構想”に半年遅れで1998年春にスタートしたのが“今宮駅前北開・中開地区まちづくり構想”です。
構想策定のきっかけは、関西本線の駅としてあまり賑わいのなかったJR今宮駅が立体化により環状線の高架駅として整備されるようになったことで、これまで出入口もなく駅裏であった北開・中開地区が駅前となり西成区の新しい玄関口として生まれ変わることに期待が集まりました。それまでの北開・中開地区は鉄道利用上の利便が悪いだけではなく、鉄道と幹線道路によって周辺地区と分断されたなかに老朽住宅や工場、倉庫などが混在し、駅前立地にはほど遠い状況にありました。また中小規模の未利用地が点在していました。したがって、まちづくりの最大の目標は、いかにして今宮駅を西成区の玄関口として広く認知してもらえるようにするかというところにあり、そのために、駅前らしいにぎわいのある施設づくりや土地利用の整理、老朽住宅の解消、駅につながる魅力的な駅前道路づくり、などがテーマとなりました。にぎわい施設の建設や未利用地の集約による土地利用の整理等は、将来の土地利用構想を示す中で、ゆっくりと誘導していくことになりますが、地区を象徴するハーモニカ長屋と言われた老朽住宅は市営住宅と一体に建て替えられました。また、魅力的な駅前道路づくりは地区内の住人と大阪市から派遣された専門家が何度もワークショップを開いて検討しました。ワークショップでは、まず駅前道路として整備する道路を既存の道路の中から選択しました。次に、その道路を魅力的な駅前道路にするために何が必要か考えました。人と車の棲み分けはどうする? 歩いて楽しい道にするためにはどうすれば? など、いろいろ議論し、提案内容が実現可能かどうかについてはその都度、大阪市とも協議しながら「今宮駅前コミュニティ道路」計画案としてまとめ上げました。計画案では、歩行者の安全のために車は一方通行とし、道路を蛇行させることで車のスピードを制限、歩行者には視覚的な楽しさと緑や休憩の空間を提供する。また、様々なストリートファニチュアを設置、路面の舗装材料や色彩についても玄関口にふさわしい仕様とし、歩行者空間の魅力づくりをはかる。ことなどが盛り込まれています。計画案は大阪市により一部変更が施されていますが、ほとんど原案に近い内容で「今宮駅前コミュニティ道路」として実現されています。