第15話 ヒューマンライツ教育財団の設立

「西成のまちづくり100話」

 ヒューマンライツ教育財団の設立

 財団法人ヒューマンライツ教育財団は、1993年12月18日に設立されました。これは、部落解放同盟西成支部が、長年にわたる蓄財5億円を基金にして、地域や広く社会の人材育成に貢献したいとの思いで設立されたものでした。
 教育財団の実施する主たる事業は「奨学金事業」で、被差別部落に在住する者、被差別部落に存在する学校に在学する者、被差別部落に在住する保護者の子どもで、「人権尊重のための豊かな感覚を習得しようとする」意志を有する者に、高校、大学奨学金を給付するというものです。奨学金事業以外にも、海外留学生に人権教育助成金を給付する「海外留学生奨学金事業」や、学校及び社会教育施設において行われる人権問題に関する教育を支援するために、学校及び社会教育施設に助成金を給付する「人権教育助成事業」、また、部落問題や障害者、女性、在日朝鮮人、スラム問題等、現代の人権問題の資料収集等の「部落問題調査・研究事業」を事業内容として出発しました。
 設立初期の頃の奨学生(4期生)で、53歳で立命館大学に合格された中西明美さんは、手記にこう述べておられます。
  「私は53歳です。西成地区に対して人一倍愛着心を持っています。私が、 小学校一年の時、父が死亡し、母親一人で子ども4人を育ててくれました。 当然貧しく、長兄が知的障害者だったこともあり、近所の人の助けがなくて は生きていけなかった。今、法学部に社会人として入学。私は、まだまだ勉 強が足らない。これからもっと自由と平等、人間の尊厳が守られるような社 会を作っていけるよう、少しでもお世話になった地区への恩返しの意味でも 頑張っていきたい」。
 教育財団は、別掲のタイ視察、ニュージーランド視察の海外派遣事業や、西成区在日コリアン人権意識調査等を実施してきました。また、教育財団設立直後の1994年7月24日には、地域の医療拠点であるツルミ診療所の泉正夫先生から、教育財団への1億円の寄付の申し出がありました。教育財団は、この寄付を「泉基金」として、医療や福祉の人材育成に活用することにしました。
 この頃、部落解放同盟西成支部では、「持続可能な部落解放運動」という問題意識があり、財団法人や医療法人、そして社会福祉法人の勉強や情報収集を始めました。その最初の事業が財団法人設立だったわけです。日本経済は長期の不況へと向かって行き、金利は下がっていきましたが、教育財団にかけた解放運動の思いは次第に地域に浸透していきました。

資料:ヒューマンライツ教育財団の設立

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