第16話 西成ブックレット『西成で骨を考えた』

「西成のまちづくり100話」

西成ブックレット『西成で骨を考えた』


西成地区で牛や豚の骨や脂肪から油脂などをつくるレンダリング業(化製業)が戦前から行われ、数少ない地場産業として今日まで続いてきたこと、悪臭公害の解消と工場の近代化および技術力・研究開発力の向上による魅力ある地場産業としての再生を期待して、西成地区街づくり委員会が中心となり、化製業者の協業化による産業集約化を進めたことは、第12話「西成のまちづくりとレンダリング産業」で書きました。しかし、西成地区内に集約化工場の建設が決まるまでには、多くの難題を乗り越えなければなりませんでした。
そのひとつが地域住民への説得でした。

集約化を進めるにあたって、地域住民の気持ちとしてはまず地区外への移転でした。街づくり委員会としても当初は地区外への代替地探しを追求しましたが、適当なところはなく、地区内に建設する以外にないという結論に達しました。また、これまで地域で営々と生業を続け、一定の雇用も生み出してきた地場産業としての化製場への思いや、臭いから余所に移すというのでは公害の持ち出しで何の解決にもならないという反省もあって、むしろレンダリングの可能性に目を向け、集約化をまちづくりの一環として位置づけることで、住民への説得と集約化の進展をめざしたものです。今回のお話、西成ブックレット『西成で骨を考えた』は、副題に「西成のまちづくりとレンダリング産業」とあるように、ほとんど知られていないレンダリング産業の事業内容と、それが西成のまちづくりに持つ意義とを確認し、地域の人々の理解を得ることを図って1998年に作成したものです。

内容は、夕食中の家庭に突然牛おやじが訪問してくる突飛な漫画仕立ての導入で始まり、レンダリング産業とはどんなものか、西成ではどんなことをしているのか、また、レンダリングの代表的な製品一つひとつについてその可能性などを、誰にでもわかりやすく解説しています。事業者のインタビュー記事も貴重な証言。事業者、まちづくり関係者を交えての座談会「21世紀の未来型レンダリング事業を考える」は、西成のまちづくりとレンダリングの可能性について、当時の関係者の熱い思いが伝わってきます。

ところで、『西成で骨を考えた』は、当初は、レンダリングといういわば地区を性格づけてきた産業を縦糸に、そこで織りなす西成文化を、正の部分も負の部分も、また陽の部分も陰の部分もひっくるめて掘り起こしてみようという、西成発の西成文化論とも言うべき書を考えていました。しかし、力不足と焦点を絞り込むことを優先し、主に地域の住民や子どもたちを対象に、レンダリングへの理解を深めてもらうためのブックレットの発行に落ち着きました。A5判、本文96ページの小冊子。奥付など表紙の裏面(表2・3)を刷り忘れ、あわててシールを貼ったり、肝腎のrenderingの綴りをまちがえるなどミスも目につきますが、今となってはちょっと他にはない西成ならではの資料となっています。

資料:西成ブックレット「西成で骨を考えた」

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