「西成のまちづくり100話」
鶴見橋商店街活性化構想
鶴見橋商店街は、東西約2㎞の長さに8つの番街を有し、市内でも有数のにぎわいを誇っていましたが、消費志向や商業環境の変化により活力を失い、空き店舗が目立ちはじめました。このような事態に直面し、商店街連合の方々を中心に中小企業診断士等の専門家をまじえて鶴見橋商店街の活性化が構想されました。活性化の検討がスタートしたのは1995年で、当時すでに商店街の衰退化傾向は西成地域に限らず全国的な問題となっていました。
鶴見橋商店街を構成する各店舗は間口が3~4mと狭く、しかも老朽化しており、その多くは通路にはみ出して陳列されています。そのため5.5mの通路幅が狭められ、さらに自転車利用者が多いことも相俟って、顧客が安心してゆっくりと買い物を楽しめるような魅力的な買い物空間となっていません。
また、経営者の高齢化と後継者不足が深刻な問題となっていました。後継者がいないと店構えを残したまま廃業することになり空き店舗が残ります。
鶴見橋商店街の空き店舗は番街によってばらつきはありますが、1996年時点では全334店舗中47店舗、14.1%で、当時の全国平均8.8%と比べると非常に速いスピードで空き店舗が発生しています。
そこに、なにわ筋の拡幅によって商店街が東西に分断されるという問題が湧き上がり、商店街連合としては大変な危機意識を持ちました。
このような状況で策定されたのが本活性化構想で、「基礎的環境整備」、「商業機能の強化と組織力の強化」、「新しい商空間の提案」の3つのテーマに分かれ、「基礎的環境整備」では、店舗や通路、施設等の空間的な整備方策が、「商業機能の強化と組織力の強化」では、当面取り組む短期プラン、3~5年後を目処に取り組む中期プラン、5年後には取り組む長期プランと時系列を明確にしたうえで空き店舗対策や組織力強化の方向付けが明示されています。そして「新しい商空間の提案」では、西成地区の新しい生活文化を創造していくための方策について、西成地区におけるまちづくりのコアと位置付けられた「なにわ筋結節点」を商業の視点から描いた将来イメージが示されています。
「なにわ筋結節点」については別稿でも紹介しますが、鶴見橋商店街の分断ポイントとなる、なにわ筋と鶴見橋商店街の交差点のことで、ここには現在、この活性化構想で示された、鶴をモチーフにして5番街と6番街をリング状につなぐシンボリックな信号機が設置されています。これには、かつてこの地に鶴の飛来が見られたことから鶴見橋と呼ばれたという由来に、未来への発展の思いを込めた商店会の皆さんの熱い思いが込められています。