「西成のまちづくり100話」
不況・緊急アンケートを実施
西成地区街づくり委員会は、1998年、「不況・緊急アンケート」を実施しました。この頃、数年来の不況の影響は顕著で、鶴見橋商店街の売上げは急降下し、失業の相談も増えたことから、この調査を実施することになりました。
調査は、「生活者編」と「事業経営者編」の二通りで、前者は、地区居住の165人を対象に、後者は地区内の事業者93人(製造業43人、商店街44人)を対象に、いずれも98年6月に実施し、8月に報告書を作成しました。
「事業経営者編」では、この一年間の経営状態について、「非常に苦しくなった」66.3%、「やや苦しくなった」27.5%、合わせると9割以上が苦しくなったと回答。対策としての「人件費の削減」は、商店街が40.9%、中小企業で83.3%にもなりました。この頃の鶴見橋商店街の空店舗率はまだ14.1%でしたが、それでも大阪市の7.1%の倍になっていました。また、行政に望むこととして、「金融面からの支援」が中小企業の77.6%を占め、「商店街の活性化支援」は63.6%になりました。この調査にご協力いただいた里中陽一さん(商店街コンサルタント、京都芸術短大講師)は次のようにコメントされました。「仕事柄、売上げが減ったと、あちこちで耳にするようになったが、この調査では、その様子が数値で確認された。それにしても、西成地区はひどい。中小企業の9割強が売上げ減少しているなんて以上な事態だ。売上げや注文減少、資金繰り難や競争激化が強まって、製品単価の低下やコストアップに拍車がかかり、経営がさらに悪化するという悪循環に陥っている。まさに『西成の危機』で、緊急の対策が必要だ」。
「生活者編」では、大阪市内の完全失業率7.8%に対し、西成地区では17.6%にもなり、「解雇の不安」を抱える人は回答者の4人に1人にもなりました。また、不安定就労で働いている人が多く、資格58.2%、技術53.3%、知識44.8%を身に着けて、転職したいと希望している人が多いのも特徴でした。ここ一年間の生活実感では、「生活が苦しくなった」が70.9%にものぼり、全国一般世帯の43.7%を大きく上回りました。
街づくり委員会では、この調査結果をもとに、(1)働く人のための相談体制の整備が必要、(2)現行制度を使いやすくしてもらう改革を提案していく、(3)街づくりの推進は、産業振興や雇用開発にもつながるので、住民と事業者、商店主が一体になった取り組みを進めることを確認しました。