「西成のまちづくり100話」
「なにわ筋」沿道地区まちづくり構想
西成地区のまちづくりが行政を巻き込んで本格的に進められるきっかけとなったのが「なにわ筋」の拡幅延伸問題です。「なにわ筋」拡幅延伸は地区の中心を貫いて大阪市内西部を南北に結ぶ幹線道路として事業計画が進められていました。広域的な交通の利便向上を図る目的での道路整備ですが、地区にとっては同時に、大きな課題を抱えることになりました。
1つは、「なにわ筋」が地区の顔として新しく生まれ変わらなければならないにも関わらず、切り取り買収による道路拡幅で、これまでの木造密集住宅街区が東西に分断され、その結果、老朽化した木造住宅の裏側が新しい道路に面することになり、いわば道路にお尻を向けたファサード(景観)が出現してしまうことでした。
次に、以前、「鶴見橋商店街活性化構想」でも触れましたが、地区を東西に貫き地区の人の流れの大動脈である鶴見橋商店街が東西に分断されることは特に商店街の人たちに大きな危機感を抱かせました。
また、「なにわ筋」沿いには多くの公共施設が立地しており、道路拡幅に伴う再編、整備が地区の生活圏再編と合わせ大きな課題となりました。
そこで1999年、これら課題に取り組む構想検討会を設置し、3年間に亘りアンケート調査や、ワークショップ等を重ね「なにわ筋沿道地区まちづくり構想」を作成しました。
構想の柱となるのは、「なにわ筋」を地区のメインストリートと位置付けて、A.メインストリートにふさわしい道路整備と景観づくり、そして、B.鶴見橋商店街と一体になった賑わいづくり、C.公共施設の効率的な再整備、についての方策です。
これに基づき、まちづくり構想では、長橋通り~梅南通り間の「なにわ筋」沿道地区を、1.コアゾーン、2.商店街活性化ゾーン、3.店舗・住宅・公共施設検討ゾーン、4.商業・業務交流ゾーン、5.店舗・中高層住宅併用ゾーン、6.面的居住環境整備ゾーン、7.協調・共同型居住環境整備ゾーンの7ゾーンに分類し、それぞれの整備方針が示されています。
その後、なにわ筋は広い中央分離帯を持つ無電柱の景観配慮型道路として拡幅整備が終了しました。そして、コアゾーンでも特に重要な位置を占める鶴見橋商店街との結節点には、鶴をモチーフとして5番街と6番街を視覚的に一体化するリング型信号機が設置され、北西コーナー部分は木造老朽住宅の共同建て替えにより、店舗、高齢者施設、集合住宅の複合ビルに生まれ変わりました。また、面的居住環境整備ゾーンでは、住宅地区改良事業が進められ、隣接の道路沿いには診療所が新しく設置されました。
そして、道路沿いに配置されていた保育所や集会室などの公共施設も、移転や統廃合が進められるなど、少しずつではありますが、着実にまちは表情を変えつつあります。