第30話 都市型生活関連産業振興施設構想

「西成のまちづくり100話」

都市型生活関連産業振興施設構想

 西成地区のまちづくりの中で大きな比重を占めたのが、地区内に散在する大阪市有未利用地の活用でしたが、旭二丁目の藤川金属西隣の土地活用の検討も重要なテーマでした。ここに産業振興施設を誘致できないかと街づくり委員会が提案したことから、検討が始まりました。
 2001年(平成13年)6月に「産業振興施設懇談会」が設置され、大阪市と街づくり委員会にDAN研究所、櫂建築事務所、中小企業診断士の高見一夫氏が参画して、検討が始まりました。
 着眼点は「都市型生活関連産業」でした。西成の地場産業である皮革・製靴産業は、分野としては生活関連産業で、この分野は今後成長が期待され、生活者のニーズも広がり、新規参入と創業の可能性が高いとみていました。少子高齢化社会を見通して、ライフスタイルの多様性に対応することで、皮革・製靴産業をコアにしたファッション産業、生活関連産業を振興するインキュベート施設を誘致しようと考えたわけです。
 懇談会では、「大阪産業創造館を中核とした『ものづくり振興ネットワーク』の一翼を担う産業振興施設」という仮説を立て、施設コンセプトを「消費財を中心に、市場とマッチする新製品開発・創業拠点」としました。施設の機能は、1.インキュベート・スペース提供機能(研究試作ラボ、レンタルオフィスのイメージ)、2.支援サービス機能(経営効率化と新事業創出のコーディネートサービス)、3.開発支援機能(売れる商品開発のための情報提供と事業性評価)、4.人材育成・交流機能(ものづくり人材育成と交流・コラボレーションによる市場創出)の四つと位置づけました。
 この産業振興施設によって、全市的には、1.創業の促進2.新規事業展開の促進3.既存産業集積の活性化4.雇用増大・定住の促進5.都市活力の増進という波及効果が得られ、西成の地域的には、1.まちづくりの推進(福祉人材開発研修センターとなにわ筋に並立)2.創業期企業の集積3.地域と創業期企業の交流拠点4.新聞や創業期企業(企業家)の育成(地域の新事業と人材育成)が期待されると予測しました。元々、福祉に熱心だった西成地区では、ユニバーサルデザイン(年齢や能力に関わりなく全ての生活者に適合するデザイン)や、高齢化によって新しい生活産業が成長することに関心を持っていました。
 この産業振興施設構想は、2001年(平成13年)構想策定調査、2002年基本計画、2003年基本設計、実施設計、2004年着工、建設、オープンのスケジュールを建て検討が進められましたが、大阪市の財政事情や政策変更で、残念ながら構想倒れに終わりました。しかし、その後、地元での政策要望は続き、民間活力の活用による再検討が行われることになりました。

資料:都市型生活関連産業振興施設構想

「西成のまちづくり100話」

都市型生活関連産業振興施設構想

 西成地区のまちづくりの中で大きな比重を占めたのが、地区内に散在する大阪市有未利用地の活用でしたが、旭二丁目の藤川金属西隣の土地活用の検討も重要なテーマでした。ここに産業振興施設を誘致できないかと街づくり委員会が提案したことから、検討が始まりました。
 2001年(平成13年)6月に「産業振興施設懇談会」が設置され、大阪市と街づくり委員会にDAN研究所、櫂建築事務所、中小企業診断士の高見一夫氏が参画して、検討が始まりました。
 着眼点は「都市型生活関連産業」でした。西成の地場産業である皮革・製靴産業は、分野としては生活関連産業で、この分野は今後成長が期待され、生活者のニーズも広がり、新規参入と創業の可能性が高いとみていました。少子高齢化社会を見通して、ライフスタイルの多様性に対応することで、皮革・製靴産業をコアにしたファッション産業、生活関連産業を振興するインキュベート施設を誘致しようと考えたわけです。
 懇談会では、「大阪産業創造館を中核とした『ものづくり振興ネットワーク』の一翼を担う産業振興施設」という仮説を立て、施設コンセプトを「消費財を中心に、市場とマッチする新製品開発・創業拠点」としました。施設の機能は、①インキュベート・スペース提供機能(研究試作ラボ、レンタルオフィスのイメージ)、②支援サービス機能(経営効率化と新事業創出のコーディネートサービス)、③開発支援機能(売れる商品開発のための情報提供と事業性評価)、④人材育成・交流機能(ものづくり人材育成と交流・コラボレーションによる市場創出)の四つと位置づけました。
 この産業振興施設によって、全市的には、①創業の促進②新規事業展開の促進③既存産業集積の活性化④雇用増大・定住の促進⑤都市活力の増進という波及効果が得られ、西成の地域的には、①まちづくりの推進(福祉人材開発研修センターとなにわ筋に並立)②創業期企業の集積③地域と創業期企業の交流拠点④新聞や創業期企業(企業家)の育成(地域の新事業と人材育成)が期待されると予測しました。元々、福祉に熱心だった西成地区では、ユニバーサルデザイン(年齢や能力に関わりなく全ての生活者に適合するデザイン)や、高齢化によって新しい生活産業が成長することに関心を持っていました。
 この産業振興施設構想は、2001年(平成13年)構想策定調査、2002年基本計画、2003年基本設計、実施設計、2004年着工、建設、オープンのスケジュールを建て検討が進められましたが、大阪市の財政事情や政策変更で、残念ながら構想倒れに終わりました。しかし、その後、地元での政策要望は続き、民間活力の活用による再検討が行われることになりました。

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