第31話 民間活力導入による都市型生活関連産業振興施設建設構想

「西成のまちづくり100話」

民間活力導入による都市型生活関連産業振興施設建設構想

 2001年からの旭2丁目の産業振興施設建設構想は、財政事情などによりいったんとん挫しましたが、大阪市と西成地区街づくり委員会は、2006年、再び、「民間活力導入による都市型生活関連産業振興施設建設構想」をまとめることになりました。
 地元からは、あらためて、大阪市有未利用地が景観的にも、衛生面でも、防犯面でもまちづくりを阻害していることから、旭2丁目の土地活用は焦眉の課題であるが、財政面から構想が頓挫した経過を踏まえ、民間活力の導入による再検討を求めました。市有地を事業用定期借地権付きで民間事業者に有償貸与し、民間の資金で産業振興施設と上階の賃貸住宅を建設するというもので、大阪市は、土地代を貰いながら産業振興施設を運営し、民間事業者は、賃貸住宅を建設、運営するというものでした。
 2001年の検討時より、少子高齢化やライフスタイルの変化など社会経済環境の変化は顕著で、購買力を持った高齢者市場は拡大し、ユニバーサルデザインの需要は高くなっていました。都市型生活関連産業での新規創業や既存事業所の新分野進出の支援が、大阪経済への再生と西成の発展につながると考え、地元では、民間事業者を広く求めるだけでなく、地元から事業者を創ることも含めて熱心な誘致を行いました。
 地元からは、地域活性化事業として新たに、1.コミュニティ・ビジネスの育成拠点、2.西成製靴塾や津守焼きの実績を踏まえた人材育成、3.新たに設立されていた「にしなりくらし組合」と連携したユニバーサルデザイン商品開発ためのモニタリング事業などの提案も行いました。また、入居者確保の観点もあって、産業振興と就労支援を合体する構想も検討し、2001年以降設立されていた大阪市地域就労支援センターのサテライト事業も提案しました。
 住宅事業についても、1.SOHO型住宅や雇用促進住宅という「しごと対応型住宅」、2.ファミリー向け賃貸や、ライフステージの変化に合わせて間取りや内装を変えられるスケルトン住宅などの「良質な住宅」、3.ニート等のグループハウスや高齢者下宿など「福祉対応型住宅」、4.一人暮らし用レディースマンションやケア付きひとり親家庭住宅等「女性や子育て世帯対応住宅」などの構想を検討しました。
 民間活力導入型で画期的な構想検討で、大阪市も前向きでしたが、飛鳥会事件などによる同和行政への逆風、大阪市の行政機構改革の政治焦点化の中で、新規事業への風当たりは急速に強くなり、構想熱は急速に冷めていきました。いまから考えても残念な構想断念でした。

 資料:民間活力導入による都市型生活関連産業振興施設建設構想

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