第34話 西成障害者会館の設立

「西成のまちづくり100話」

西成障害者会館の設立

きっかけとなった障害児への差別事件
 1988年、私たちの街の小学校で障害児に対する差別事件が起こりました。顔に油性マジックで落書きをされたり、コミュニケ-ション用の文字盤をはぎ取られるなどの行為に親たちの怒りは激しいものでした。これをきっかけに「障害児保護者会」が結成され、地域を上げた障害児教育の充実、権利擁護の取り組みが進められました。

障害者の生活実態調査
 この事件を契機に地域で暮らすの障害者の生活実態調査が行われました。三度の食事が取られていない、長年入浴していないなどの障害者の実態が明らかになりました。
 調査をきっかけに、このような生活を変えていくための拠点が必要だという声が当事者・親・家族・市民からあがりはじめました。

障害者会館建設準備室の活動
 1992年4月に設置された「西成障害者会館建設準備室」では、手話・展示・障害者識字・障害者水泳などの講習や、障害児保護者会の取り組みなどが始められました。
 11月には障害者ニ-ズ調査を実施し、その分析結果は9項目の指針として公表されました。

「西成障害者会館」の開所
 1993年6月30日、障害児・者の自己決定が尊重される社会と、あんしんして地域で暮らせるまちづくりを実現することを目的とし、西成障害者会館はオ-プンしました。また開所式に先立ち、「障害者の人権を守る会」が結成され、当事者主体の取り組みを障害者会館を拠点に行っていく方針が確認されました。

障害者ニ-ドに応じた事業展開
 西成障害者会館では、障害者ニ-ズ調査で明らかとなった課題解決のための事業が行われました。食事や入浴に困っている人たちを念頭においた「障害者デイサ-ビス」、移動が困難な人たちのための「送迎サ-ビス」、自分で働いて生活したい人たちのための就労支援事業「アスタック」など、今では障害者総合支援法のメニュ-でおなじみのものですが、当時はどこにもないものとして注目を浴びました。
 なによりも、このような事業利用をきっかけに障害者自身や家族が本音を語り、自らが充実した生活を求める取り組みが行われたことが大きな成果だと言えます。

理解者が増えました
 障害者会館を利用される人たちの昼食は、地域の中高齢の女性達が、「私たちが出来るのはこれだけや」と、昼食調理を無償でかって出てくれました。家庭料理の延長ですが、数十年のノウハウの賜物、利用者だけでなく職員にも好評でした。この活動は配食サ-ビスへと展開し、現在の西成食事サ-ビス事業へと発展していきます。
 また音訳朗読や障害者水泳教室などのボランティアなども集まり、「西成区ボランティアバンク」活動として大きく発展することとなりました。

 資料:西成障害者会館の設立

 

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